2010年7月20日火曜日

大谷石の可能性

石という素材を壁に使ってみたりすることは、私にとっても非常に興味があることです。例えば、神奈川県立近代美術館の鎌倉館本館には、大谷石の粗石が使われています。神奈川県立近代美術館の鎌倉館本館が竣工したのは1951年で、いわば戦後の貧しい時代です。設計は坂倉準三氏です。鉄骨も不足しているなか当時の神奈川県知事内山知事が「貧しい時代にこそ文化を!」という粋な方針で神奈川県立近代美術館や神奈川県立音楽堂の建設に力を注いだと言われています。

確かに、当時、近美の現場統括を行った駒田先生にインタビューした際、予算が合わなかった為きれいな大谷石を使うことができなかったというお話を伺いました。しかし、ル・コルビュジェの事務所で「マテの家」の実施設計を行っていた坂倉準三は、この時も粗石を使っていたといいます。なので、この近美でも粗石仕上としたという話でした。確かに予算的にも粗石の方が安価であったということもあるそうですが、粗い方が恐らく、建築の「他者性」というものが表現できたのではないかと思います。

ふと知人のコサージュ作家、遠藤さんから今回、展覧会を行う場所について大谷石とのコラボレーションについてのメールが来たため、今まで私が経験した近美を通して思いを巡らせた次第でした。