2010年7月29日木曜日

SUMIKA project見学会

今日は、いつもお世話になっているフクダ・アーキテクツのお二人にお誘いいただき、栃木県の宇都宮まで東京ガスさんの「SUMKIA project」の見学会に出掛けました。

伊東豊雄さんのプロデュースで伊東さんを含めて4人の建築家による実験住宅、パヴィリオンが2008年に建てられました。
伊東豊雄さんの「SUMIKA パヴィリオン」、西沢大良さんの「宇都宮のハウス」、 藤本壮介さんの「House before House」、藤森照信さんの「コールハウス」の4つ。
4人に与えられたテーマはプリミティブな住処ということだったようです。

東京ガスさんといえば、エコウィルなどガスで発電したりということで最新の設備を提供しているのにもかかわらず、プリミティブ・笑
この矛盾は、どう建築家の作品にかかわってくるのかが非常に興味深いところでした。
テクノロジーに支えられながら現代の生活の営みがあり、時代に逆行するのは難しい気もします。

伊東さんのパヴィリオンは、以前にサーペンタインギャラリーで計画された案の延長にこのパヴィリオンがあるのではないかということを察しました。4本の柱+集成材によってつくられる幾何学的(ボロノイ分割による図形)スケルトンが外周を多い、さらにガラスと不燃ボード+FRPで仕上げる。ジョイントの加工など、まさに今の技術を使いながら、原初的な幾何学パターンをつかい、まるで確かに自然の中の木陰のようなおおらかな場にいる感じがします。ただ、ボードとガラスのとり合いをシールのみで処理しているところが気になりました。ここまでスレンダーだと、風や地震などで「揺れる」、それに耐えうる方法が他になかったのかと思いました。
 続いて、バスに移動して、「宇都宮のハウス」と「House before House」のところへ。

西沢さんの「宇都宮のハウス」は、おおらかな平屋建てで、自然の芝生が入り込んできたり、建具を閉じればインティメートな空間となり、開くと周囲の環境と一体となった広がりのある場となる。さらに、工夫されたこととして、陽の光により、時間を感じることができるというもの。住宅として、こういう変化があるということは大切なのだなと素直に思える作品でした。ただ、ルーバー状の天井の仕上げが簡易すぎているが故に、2年の経年変化後、一部が落ちてしまっていたのが残念。芝生も枯れていたり。


藤本さんの「House before House」は、コンセプトは、ものすごくよくわかる。安藤忠雄さんの「住吉の長屋」や荒川修作さんの「養老天命反転地」のような、外部空間の中で生活し、そして身体を覚醒させるかのような計画には好感をもちました。が、本当に人がここで暮らせるのだろうか。あまりにも個室などをバラマキ過ぎてはいないだろうかなど、非常にきになるところでした。また、西沢立衛さんの「森山邸」にも似ている気がします。全ては個人である、家族が大人数などで集うはずがない。という話だったらわかる。個室群住居をもっと楽しくしようというような。
 
藤森さんの「コールハウス」は、外壁を焼杉でしあげられた、木造建築でありつつも洞窟をイメージされたというお話のとおり、人間の本来的な集う場とは、かくあるべきというようないい空間でした。しっかりと求心性のある二股の柱も存在感があり、象徴として機能していました。しっかりと、おなじみの茶室もありました・笑
小さいながらも楽しい建築になっていたと思います。藤森さんの場合は、もう手馴れたというか円熟さがあるというか、巧さが光ります。
また、きっとネーミングもレム・コールハースとかけているに違いない・笑 遊び心満載な気がしました。
 現代を輝く建築家の共演ということで、楽しくもあり、色々と考えさせられました。技術とプリミティブな人間の本来性はどこで出会うか。
これは、私も追求したいところです。

2010年7月28日水曜日

神奈川県立近代美術館 鎌倉館

そんな訳で、鎌倉の神奈川県立近代美術館鎌倉館に久々に行ってみました。
以前に保存のことをやっていて、足繁く通ったのでなんだか懐かしい気分でした。
エントランス


1階は大谷石(躯体は鉄骨)で仕上げられていて、半外部空間が巡っています。2階が展示空間。
2階の展示空間は閉じていて美術展を鑑賞した後、1階に下りて、平家池を眺めながら外気の中で心も開いた気持ちで展覧会を反芻したり、蓮池を眺めながらボーっとできる場所になっています。コルビュジェの「農村計画」を参考にして作られたというこの美術館。まさに、コルビュジェの様な建築でもありますが(しかも、師匠に先駆けて美術館を竣工させている)そこは、坂倉氏のパリ万博日本館での経験、そして先にあった木々を伐採せずに建てるという配慮など坂倉準三が熟考した結晶としての建築がここにあるのだと思います。
2階から1階に降りる階段 奥は蓮池が展開
蓮池に面したピロティ下 冬は水面に反射した陽の光が天井を照らす
中庭 かつてはここで批評会などが行われた 彫刻はイサム・ノグチ

2010年7月20日火曜日

大谷石の可能性

石という素材を壁に使ってみたりすることは、私にとっても非常に興味があることです。例えば、神奈川県立近代美術館の鎌倉館本館には、大谷石の粗石が使われています。神奈川県立近代美術館の鎌倉館本館が竣工したのは1951年で、いわば戦後の貧しい時代です。設計は坂倉準三氏です。鉄骨も不足しているなか当時の神奈川県知事内山知事が「貧しい時代にこそ文化を!」という粋な方針で神奈川県立近代美術館や神奈川県立音楽堂の建設に力を注いだと言われています。

確かに、当時、近美の現場統括を行った駒田先生にインタビューした際、予算が合わなかった為きれいな大谷石を使うことができなかったというお話を伺いました。しかし、ル・コルビュジェの事務所で「マテの家」の実施設計を行っていた坂倉準三は、この時も粗石を使っていたといいます。なので、この近美でも粗石仕上としたという話でした。確かに予算的にも粗石の方が安価であったということもあるそうですが、粗い方が恐らく、建築の「他者性」というものが表現できたのではないかと思います。

ふと知人のコサージュ作家、遠藤さんから今回、展覧会を行う場所について大谷石とのコラボレーションについてのメールが来たため、今まで私が経験した近美を通して思いを巡らせた次第でした。